日本の南西部、東シナ海に浮かぶ奄美大島。自然が豊かなことで知られるこの島ですが、実際どんな風景が広がっているのか、あなたはご存知ですか。独特な生態系があったり、マングローブ林があったり、なんとなく知っているつもりでも、実はその魅力についてよく知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回の記事では、有名なマングローブ林をはじめ奄美大島の魅力を基本情報と一緒にお伝えしていきます。
奄美大島の基本情報
奄美大島の魅力に迫る前に、まずは基本情報を押さえておきましょう。観光を大いに楽しむには、その土地がどんな場所なのか、特に気候や交通アクセスの良し悪しなどを知っておく必要があります。みなさんが現地に行ってから「しまった!」とならないために、奄美大島のさまざまな情報を簡潔にまとめてみました。
島データ
奄美大島は大小50を超える島々からなる奄美群島の中で一番大きな島で、鹿児島県に所在します。面積は712キロ平方メートル、日本各地にある離島の中で全国3位の大きさです。そんな大きな島内には4万3271人の島民がおり、観光業を中心に賑わいを見せています(2018年現在)。島の中南部は原生林の広がる山岳地帯ですが、北部はなだらかな山地が広がっています。そして海沿いには真っ白な砂浜が広がり、特に夏場は海水浴やマリンスポーツが盛んです。
奄美大島に行くには、フェリーもしくは飛行機を使います。フェリーは鹿児島~沖縄を結んでおり、その途中で奄美大島の名瀬に停留します。夕方の18時ごろに鹿児島を出発し、翌朝の5時ごろに名瀬に到着するので、のんびりと旅を楽しみたい人にぴったりでしょう。ちなみに、神戸や東京から出発するフェリーもあります。空の便を使う場合は、もっと早く奄美大島にアクセス可能です。東京からは2時間ちょっと、大阪から向かう場合は1時間40分ほどで到着します。鹿児島からなら約1時間でアクセスできますので、ちょっと思い立って週末旅に、なんてこともできます。
シーズン
奄美地方は亜熱帯海洋性気候に属します。暖かい海に囲まれており、年間を通じて高温な気候となっています。年間の平均気温は20度を超えますが、冬の時期の平均気温は15~16度です。沖縄のような“南国”とは少し異なるので、服装には注意が必要した方がいいでしょう。4~6月の春の時期は平均気温が23度と、とても過ごしやすい気候となっています。夏になると気温は上がりますが、猛暑になる日はそれほど多くありません。また、湿度もそれほど上がらないので快適に過ごせるでしょう。ただし、直射日光が強いので日焼け対策は欠かせません。
秋冬でも暖かい日なら日中は半袖で過ごせることもありますが、朝晩は冷えるので薄手の長袖など羽織れるものがあった方がいいでしょう。温度調節ができるように、カーディガンやウィンドブレーカーなどがあると便利です。ちなみに、奄美大島の海開きは毎年旧暦の3月3日(2020年は3月26日)に行われます。春先から海に入れるので、春休みの旅行先を考えている人はぜひ検討してみてください。
奄美大島観光のキーワード
1年を通じて気候が穏やかで、自然が豊かな奄美大島には魅力的な観光スポットやアクティビティがたくさんあります。ここからは、そんな奄美大島の観光を余すところなく楽しむためのキーワードをご紹介します。知らずに行ってももちろん楽しめますが、より充実した旅行にしたいなら、ぜひ下記のキーワードはチェックしておいてくださいね。
キーワード 東洋のガラパゴス
みなさんは東太平洋に浮かぶガラパゴス諸島という島々について見聞きしたことはありますか。ガラパゴス諸島はエクアドル領にありますが、海洋島であり外界と隔絶されているため、大陸とは異なる独自の生態系が構築されていることで有名です。そして、同じように独自の生態系がある奄美大島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれることがあります。奄美大島はかつて中国大陸や日本と陸続きだったことがあり、大陸ではすでに絶滅してしまった生物が生き残っているなど、独自の固有種が多数存在するのです。
代表的な例はアマミノクロウサギです。アマミノクロウサギは短い耳と足、そして長い爪を持つ可愛らしいウサギで、国の特別天然記念物に指定されています。島内のあちこちに野生のアマミノクロウサギがいますので、車道や山道を歩いているときには飛び出しに注意しましょう。他にもアカヒゲやアマミヤマシギといった鳥類、オットンガエルやイボイモリといった両生類、アマミアオネカズラなどの植物類、と希少な動植物が数えきれないほど生息しています。ちなみに、奄美大島の面積は国面積のうちわずか0.3%ほどですが、国内全体の約16%の野生動植物がいるといわれています。
マングローブとは
奄美大島の代名詞ともいえるマングローブ。島の中南部にはマングローブの生い茂る原生林が広がっています。マングローブは熱帯域によく見られる植物ですが、実はこの「マングローブ」とは特定の植物のことを指すわけではありません。海水と淡水が混ざり合う「汽水域」に生える植物の総称なのです。汽水域は海水よりも塩分濃度が低く、淡水よりも塩分が多く含まれる水域です。塩分濃度の違いから比重が異なるため、海水と淡水が完全に混ざり合うということはなく、通常であれば比重の重い海水が下層に広がります。
そんな「海でもあり、川でもある」といえる汽水域はエサとなるプランクトンや藻類が豊富で、海の生物にとっては絶好のエサ場となります。特に自分でエサを獲る能力の低い稚魚や小さな魚たちにとってはパラダイスでしょう。そして生物だけでなく、そこで育つ植物も豊かな栄養のおかげでスクスクと育っていきます。そうしてマングローブは大きくなっていくのです。
マングローブの特徴
マングローブの特徴は、なんといっても太く丈夫な根っこです。水流に流されず、大きな体を支えるためにマングローブの根っこはとても大きくなります。その形状は植物によってさまざまですが、根元はカニやハゼといった小さな生物の絶好の隠れ家になります。そして、そういった小さな動物をエサにする鳥やカエルなどが集まるようになり、マングローブ独自の生態系が作られていきます。
マングローブの大きな根っこは「呼吸根」と呼ばれ、通常の植物の根っことは異なります。通常、植物は土の中に根を張りそこから栄養や酸素を吸収しますが、呼吸根は大気から酸素を得ることができる特殊な構造になっているのです。汽水域に育つマングローブの周りには、樹木類やツル類といった植物だけでなく、海の生き物も生息しています。海と森の両方の生態系を持つことも、マングローブの特徴として挙げられるでしょう。
マングローブの特殊能力
なぜマングローブの根っこはここまで大きく育つのでしょう。それは、マングローブが生える場所が頑丈な大地ではなくぬかるんだ湿地であることに理由があります。安定感に欠ける湿地では、細く頼りない根っこではすぐに抜けてしまいます。もし、マングローブの根っこがあれほどまでに太いものでなかったら、台風が来ただけですぐに抜けてしまうでしょう。加えて、マングローブが生えるのは海と川の両方の影響を受ける汽水域です。満潮になったり大雨が降ったりすれば水量が増え、激しい水流にさらされます。こういったリスクからその身を守るため、マングローブの根っこは太く頑丈になっているのです。
マングローブの根っこはくねっと曲がっている屈曲膝根、タコのようにくねくねしている支柱根、板のようになっている板根、とさまざまな種類があります。過酷な環境に耐えるため、それぞれ頑丈さを補強するよう進化していったのでしょう。ちなみに、こういった根の中には塩水に含まれる塩分をろ過する作用を持つものもあります。マングローブが汽水域でも生きられるのは海水から塩分を取り除くことができるからで、他にも塩分を葉っぱに蓄え落葉させることで排出するなど独自の能力を持っているものもあります。そのメカニズムについては未解明の部分が多いですが、マングローブとして育つ植物たちは海水から塩分を取り除く手段を身に着けているのです。
マングローブと生物の多様性
マングローブにはさまざまな特殊能力があり、それらのおかげで汽水域でも根を張り育つことができるようになっています。そしてこの根のおかげで小さな生き物たちは隠れ家を確保することができ、豊富なエサに囲まれてスクスクと育っていきます。そういった生き物の中にはマングローブの落ち葉を食べる甲殻類もいるほどです。このように、マングローブはさまざまな生物を守りその成長を助ける役割を果たしています。それゆえ「生き物たちのゆりかご」と呼ばれることもあります。
しかし、マングローブは資材として使われたり、土地開発によって伐採されたり、さまざまな原因から減少しつつあります。マングローブの減少は、その周りに形成されていた生態系の破壊をも意味します。マングローブの保護は、熱帯地域の環境や生物を守るためには絶対に考えなければならない問題といえるでしょう。
奄美大島のマングローブ
奄美大島に広がるマングローブの原生林は、70万平方メートルもの大きさがあります。これは国内2番目の大きさで、そこではさまざまな動植物に出会うことができます。カヌーやカヤックで探検するツアーに参加すれば、「東洋のガラパゴス」を肌で感じることができるのではないでしょうか。日本在来種のマングローブであるメヒルギとオヒルギなど、その特徴的な見た目から観察するだけでも楽しいでしょう。普段は味わえないワクワク感や解放感に、心も体も癒されること間違いなしです。
奄美の自然を存分に満喫しよう
ここまで奄美大島のマングローブについて細かく紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。その独特の生態や構造など、知らないことも多かったのではないでしょうか。マングローブをはじめ奄美大島には普段目にすることのできない自然の風景があちこちにあります。その素晴らしさを目で見て肌で感じ、心身を癒すために奄美大島を訪れてみてはいかがでしょうか。
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